コーチングとの比較
1つ目は、アメリカで1970年代から発展してきた自己啓発としてのコーチングです。
こちらは「ゴール設定」を中心にマインド(脳と心)の使い方の改善を通して人生全般の質を改善することを目指したもので、
コーチングと呼ばれる全ての手法の源流です。日本でも2000年代後半から広がり始めています。
2つ目は、主にスポーツなどの世界でチームや選手が勝負に勝つために技術指導とメンタル指導を行うものです。
具体的な技術の伝授を伴うので、スポーツの場合は引退した選手がコーチになることが多く、
メンタルに関しては専門のトレーナーが別にいることも多くなってきています。
技術の向上を必要とするあらゆる分野でコーチという言葉は用いられており、日本語では「コーチ」=「指導者」という意味合いもあります。
3つ目は1990年代終盤にアメリカから日本のビジネス界に輸入され、日本で独自の発展を遂げたものです。
主に企業において、気づきを与えることで部下の主体性を伸ばすという人材育成手法として2000年代前半に脚光を浴びました。
「君はどう思う?」と部下に質問をする、などということは上司の自信のなさ、指導力不足の表れであると考えられていた日本においては
極めて画期的なアプローチであり、それまでに行われていなかったスタイルであることから当初、大きな成果を生み出すことに成功しました。
しかし、その後、受け手から引き出すだけでは的確な人材育成にならないことも分かってきたため一時期苦戦し、
最近ではティーチングと組み合わせたり、360度評価と組み合わせたりしながら受け手の成長を支援するなど
様々なスタイルを模索しながら進化を続けています。
上述したいずれのコーチングも、未来に関して話をする要素が入っていますのでその点において類似していると言えると思います。
フィードフォワードがコーチングとは大きく異なる点は2つあります。
その1つが、コーチングの場合には「コーチ」と「コーチングを受ける人」の関係が固定的であるのに対して、
フィードフォワードの場合は「フォワーダー」と「レシーバー」は流動的で、誰がいつどちらの立場になってもいいという点です。
「コーチングを受ける人」が「コーチ」に対してコーチングを行うことはなかなかないですし、一般的な感覚としても失礼にあたります。
しかし、フィードフォワードは立場の縛りがないので、テーマごと状況ごとにどんどん「フォワーダー」と「レシーバー」が入れ替わることができます。
その意味で、フィードフォワードはコーチングに比べて手軽に使えるツールだと考えています。
また、2つ目の違いとして、コーチングはクライアント(コーチングを受ける人)にゴールがあることが前提となっているのに対して、
フィードフォワードはレシーバーがゴールを持っていない、もしくは見つけられていないとしても、問題なく実施することができる点があります。
コーチングはクライアントのゴールの達成のために行うのが基本なのですが、明確なゴールを持てている人は比較的少数なので、
まずはクライアントのゴールを見つけるお手伝いから始めることも少なくありません。
この、ゴールを見つけるお手伝いの部分はまさにフィードフォワードが得意とするところです。
「フィードフォワード」によってクライアントがゴールを見つけるのを手伝い、
「コーチング」によって本格的に大きな成果を上げられるようになってもらう、という使い分けが今後、標準になっていくと考えています。